融資

創業融資の自己資金とは?必要な額はいくら?

日本政策金融公庫にて創業融資の申し込みを行う場合、「自己資金」は非常に重要な役割を担います。

自己資金がいくら蓄えられているかによって、融資額だけでなく融資の可否にも大きな影響を及ぼすこととなるためです。

今回は創業融資の自己資金について解説します。

なぜ自己資金が必要なの?いくら必要なの?

別記事でも解説したとおり、創業融資の審査においては、「スキル」や「人間性」、「計画の実効性」の3つの要素が問われます。

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自己資金は、これらのうち「人間性」や「計画の実効性」を測る重要な根拠となり、充分な自己資金があれば、創業に対する覚悟や計画性を持っており、成功する可能性が高まると考えられているのです。

つまり反対に自己資金が少ない状態であれば、行き当たりばったりの創業とみなされてしまいます。

なお自己資金は、公庫の制度上は融資額の10分の1以上が必要とされていますが、少なくとも希望融資額の2~3割程度の自己資金は準備しておきたいところです。

したがってたとえば融資希望額が600万円であれば、自己資金は200~300万円程度が目安となるでしょう。

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なお日本政策金融公庫が公表している『2020年新規開業実態調査』によると、開業時の資金調達額は全体で1,194万円であり、内訳としては「自己資金」が平均266万円、「金融機関等からの借入」が825万円となっており、両者で全体の91.3%を占めています。

自己資金が多くて困ることはありませんので、創業に向けてできるだけ多くの自己資金を貯めておきましょう。

自己資金として認められるもの

具体的には、以下のものが自己資金として認められます。

コツコツと貯金した自分名義の通帳

こちらが自己資金の代表例であり、日頃からコツコツと通帳に貯めたお金は堅実な人間性を表すものと評価され、融資先としての安心感をもたらすとともに、創業に向けてしっかりと準備をしてきたことの証明となります。

配偶者や子ども名義の通帳

ご結婚されている場合には、配偶者や子ども名義の預金に関しても自己資金に含めることができます。

ただしその場合には配偶者や子ども名義の通帳も提出が必要となるため、あらかじめご本人に許可を取っておきましょう。

退職金

創業するにあたって勤務先を退職し、退職金を受け取る場合には、その退職金についても自己資金として認められます。

すでに退職金を受け取っている場合には、入金先の通帳に加えて退職所得の源泉徴収票を、退職前であれば勤務先に退職金の額を確認するとともに、可能であれば退職金の額の根拠として提示できる書類(退職金規程など)を用意しましょう。

解約返戻金のある保険、子どもの学資保険

解約返戻金のある積立て型の保険に加入している場合には、その解約返戻金も自己資金として認められます。

またお子さんの学資保険に加入している場合も同様であるため、事前に保険会社へ確認するようにしましょう。

保有している株式や投資信託、有価証券等

預貯金だけでなく、株式や投資信託、有価証券等を保有している場合には、これらの資産についても自己資金に含まれます。

したがって証券会社から発行された書類やインターネット上の管理画面など、資産の保有状況を確認できるものを準備しましょう。

親族等から贈与されたお金

創業の応援として、親や兄弟などの親族から開業資金の贈与を受けるケースがありますが、そのお金が返済不要のものであれば、これらも自己資金として認められます。

そのような場合には、返済不要であることの証明として「贈与契約書」を作成しておきましょう。

また現金で受け取ってしまうと、そのお金の出所がわかりにくくなってしまうため、相手名義の通帳から自分の通帳へ直接振り込んでもらい、融資の申込みの際には親族等の通帳コピーも提示できるように準備することをお勧めします。

注意ポイント

ただし自分で貯めた自己資金がほとんどゼロの場合には、仮に親族等から贈与を受けたとしても、創業者の堅実さや計画性には疑問が残るため、融資を受けることが難しくなります。

したがって親族等から贈与を受けられる場合でも、一定の自己資金は用意しておくことが望ましいでしょう。

資産を売却して得たお金

創業にあたって株式や車、貴金属などの資産を売却した場合にも、そのお金は自己資金としてカウントされます。

ただし出所不明の入金では”見せ金”のように見えてしまう可能性があるため、売買契約書など、売却時の書類も忘れずに保管しておきましょう。

すでに事業のために使用したお金(みなし自己資金)

店舗物件の契約金や営業車両の購入など、すでに事業のために必要な投資が始まっているケースも考えられます。

これらのように、すでに事業のために支払い済みのお金についても、元々は間違いなく存在していたものとして、自己資金としてみなされます。

その場合には、契約書や請求書、領収書など、支払ったことを証明する書類が必要となるため、必ず保管するようにしましょう。

注意ポイント

ただし創業計画書に記載のない支出や支払いが半年以上も前のものについては、自己資金として認められないケースもありますのでご注意ください。

自己資金として認められないもの

一方で自己資金として認められないケースは、以下のようなものが挙げられます。

タンス預金

タンス預金のような手許現金は自己資金としては認められません。

預金口座ではなく、現金で保有している場合、第三者から見るとそれが長年にわたってコツコツ貯めたものなのか、自己資金として主張するために誰かから借りたものなのか区別がつかないためです。

自己資金とするためにタンス預金をまとめて預金口座へ入金したとしても、融資の担当者から見れば、後述する「出所がわからないお金」となってしまいます。

したがって創業を検討している方でタンス預金がある場合には、前もって少しずつ預金に預け入れるようにしましょう。

親族や友人などから借りたお金

自己資金として認められるものとして、「贈与されたお金」を挙げましたが、対照的に返済義務のある「借りたお金」は自己資金には該当しません。

したがって他者からお金を受け取ることがあれば、それが贈与なのか借入なのか、必ず根拠となる書類を用意しましょう。

出所がわからないお金

公庫の融資担当者が最も嫌うのは、「出所がよくわからないお金」です。

通帳を確認していて、出所不明のまとまった額の入金があれば、自己資金を水増しするための”見せ金”ではないかと疑われます。

もちろん先述した退職金や資産を売却したお金など、きちんとした説明とそれを証明する書類があれば自己資金として認められますが、充分な説明がない場合や証拠書類がないようなケースは不可となります。

注意ポイント

なおこのような出所がわからないお金が”見せ金”と判断された場合には、単に自己資金として認められないだけでなく、その瞬間に融資自体がNGとなってしまいますのでご注意ください。

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自己資金を正しく理解し、計画的に準備をしましょう

今回は創業融資における自己資金について解説しました。

創業に向けてコツコツ貯めたお金が評価される一方で、突然どこからともなく降ってきたようなお金は怪しまれ、自己資金として認められないだけでなく、最悪の場合には融資不可となります。

創業を検討されている方は、どの程度の自己資金が必要なのか考え、計画的に準備を進めるようにしましょう。

  • この記事を書いた人
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服部 大

2020年2月に愛知県名古屋市で独立開業した税理士/中小企業診断士です。 若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援しています。

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