「将来が不安だから、ライフプランを立てておこう」
子育てやマイホーム購入、老後の生活など、将来のライフイベントに備えて、「家計の資金計画を立てたい」と考えるご家庭は多いことでしょう。しかし実際には、頑張ってライフプランを作っても「結局、モヤモヤが解消されなかった…」と感じる人も少なくありません。
特に、個人事業主や中小企業経営者のような起業家にとってはなおさらです。
一般的なライフプランのフォーマットは、毎年の収入が安定している会社員世帯を前提に作成されているため、そもそも将来の収入が読めない起業家にとっては、現実離れした机上の空論になりがちです。
しかし、だからといって「ライフプランを立てる意味がない」というわけではありません。
起業家やそのパートナーにとっては大切なことは、自らの不安と向き合い、自分たちに合ったライフプランの立て方を知ること。
本記事では、起業家におすすめな「逆算型ライフプラン」の考え方を整理し、起業家やパートナーが不安を軽減するために役立つ将来設計の方法を解説します。
Contents
一般的なライフプランが「意味ない」と感じる理由
ライフプランの作成が無意味に感じてしまう最大の理由は、「計画を立てる理由」と「作成した結果」が一致しないというジレンマを抱えているからだと思っています。
ここでは、起業家やそのパートナーの観点から、ライフプランを立てる目的や将来設計が難しい理由を考えてみましょう。
ライフプランを作成する目的
ライフプランを作成する目的としては、将来の資金繰りを見える化し、お金に関する不安を解消することです。
子育てや親の介護、マイホーム購入、老後資金──これらの大きなライフイベントを見据えたうえで、「これからの生活にどれくらいお金が必要なのか」や「今の収入と貯蓄で足りるのか」などをシミュレーションし、将来への不安を軽減できることを期待します。
ライフプランを作成した結果、もし将来の資金繰りに不安がある場合には、生活費の見直しなどの対策を講じることとなるでしょう。
起業家やパートナーの不安とは?
起業家やそのパートナーが抱えがちな不安としては、やはり「収入の不安定さ」に起因するものが大半です。
会社員のように毎月決まった給与をもらえるわけではなく、景気や市場環境、季節などによって売上が毎年のように変動するため、10年後や20年後はおろか、来年の収入にさえ不安を感じる人も多いでしょう。(私自身もそのひとりです。)
また、起業して間もないうちは事業が軌道に乗っておらず、支出が先行することも多いため、時間が経つにつれて事業資金が少なくなることもしばしば。「このまま事業を継続しても大丈夫?」や「この調子で子どもの学費は何とかなるのかな…?」──こうした悩みは、起業家本人だけでなく、パートナーなどの家族も同じように抱えています。
実際に、日本政策金融公庫が公表している「2024年新規開業実態調査」によると、「開業時に苦労したこと」として、「資金繰り、資金調達」と「顧客・販路の開拓」がトップ2を占めており、起業にはお金や収入面の不安がつきものであることが伺えます。
このように、起業家の家庭にとっての“お金の不安”は、単に現在の収入状況だけでなく、「将来の見通しの立ちにくさ」による要素が大きいと言えます。将来への不安を抱えたままでは、事業や家庭の未来を具体的に思い描けなくなってしまうでしょう。
なお、起業家やパートナーが抱えがちな不安や、不安を放置するリスクなどに関しては、別記事で詳しく解説しています。ぜひ以下のリンクをご参照ください。
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起業家が直面するライフプランのジレンマ
そうした不安を解消するために作ったはずのライフプランですが、結局のところ役に立たないケースも少なくありません。
日本では、会社員などの「給与所得者」が大多数を占めることもあり、一般的なライフプランのフォーマットにおいても、「安定度の高い給与収入があること」を前提に設計されています。具体的には、現在の給与年収が定年まで続く(場合によっては今後さらに昇給していく)ことを想定し、将来に向けた資金繰り計画を作成することとなります。
しかし、先述したように、起業家の多くはそもそも「収入自体が不安定であること」に不安を感じているため、安定した給与収入を前提とする一般的なライフプランの考え方とは、根本的なズレが生じてしまうのです。
その結果、せっかく時間をかけてライフプランを作成しても、収入に対する不安は一向に解消されず、モヤモヤした気持ちが残ったままに…。これが、ライフプランの作成が起業家にとって「意味がない」と言われる最大の理由です。
H2:起業家に必要なのは「逆算型」のライフプラン
一般的なライフプランは、「現状の収入」から「将来の資金繰り」をシミュレーションするためのものです。
しかし、収入を予測しづらい起業家の場合には、上記のような一般的なライフプランの考え方から脱却し、「将来の支出」から「現時点での収入目標を設定する」という”逆算型”のライフプランが効果的です。
① 未来の支出から「いくら稼ぐ必要があるのか」を逆算する
子どもの教育費、マイホームの購入、老後資金…。近い将来の収入も予測しづらい起業家でも、ライフイベントに伴って「これから必要となるお金」については、ある程度イメージがしやすいものです。
そこで、起業家がライフプランを立てるときは、不安定な収入をベースに組み立てるよりも、予測しやすい「将来の支出」から可処分所得の目標値を逆算する方が合理的です。
たとえば、「子どもが進学する○年後までに500万円」「マイホーム購入を目指して、5年後までに1,000万円」といったように、今後のライフイベントに向けて、家計としての用意すべきお金とタイムリミットを設定しましょう。
そうすることで、「そのお金を貯めるためには、毎年どのくらいの可処分所得(税金や社会保険料を支払ったあとの手取額)が必要か」を逆算することが可能です。
起業家にとって、将来の収入は変動要素が多く、不確実なケースが大半です。だからこそ、将来の支出から逆算して収入の目標を立てることで、具体的かつ現実的な未来を描くことができるでしょう。
② 可処分所得から売上目標を逆算する
将来の支出額をもとに、現時点での可処分所得の目標値を逆算したら、さらに事業の売上目標を逆算することが大切です。なぜなら、可処分所得の数字だけでは事業の全体像をイメージできず、結局のところ「どれくらい頑張って働く必要があるのか」を想像しにくいためです。
そこで、可処分所得から事業の売上目標を逆算することをおすすめします。一般的に売上から可処分所得を計算する場合、以下の流れに沿って計算します。
- 売上ー経費=事業所得(利益)
- 事業所得ー(税金+社会保険料)=可処分所得
つまり、目標となる可処分所得を設定できれば、そこから事業の売上目標を逆算することも可能です。また、売上目標をイメージできれば、さらに必要な客数や客単価まで掘り下げることができ、ビジネスプランのブラッシュアップにも役立つでしょう。
売上目標を立てることで、多くの起業家にとっては、事業の目指すべき姿のイメージを膨らませることができ、目標達成に向けた営業活動や行動計画も実行しやすくなるでしょう。
③ ライフプランをパートナーと共有する
そして何より大切なのが、作成したライフプランを“家族みんなで共有すること”です。
事業主だけが数字を把握していても、家庭の不安は解消されません。夫婦や家族が「わが家はどんな未来を目指すのか」を共通認識として持つことで、家計も事業も同じ方向を向くことができます。
また、起業後に事業が思い通りに進まないこともあるでしょう。そんな事態に直面することをただ恐れるのではなく、バックアッププランを家族で話し合っておくことも、逆算型ライフプランの大切な要素です。
定期的に計画と実績を照らし合わせたうえで、必要に応じて「パート勤務の日数を増やす」や「生活費を見直す」などの対応策を夫婦間で考えておくことで、起業への不安を少なからず軽減できるでしょう。
不安を「見える化」することで得られる安心
起業家や家族が抱える不安の多くは、将来の不透明さや不確実性から生まれます。
安定収入を前提とした一般的なライフプランでは、これらの不安を解消することは難しいですが、逆算型のライフプランを作成することで、将来の支出に基づいた目標収入を見える化でき、「漠然とした不安」を「具体的な課題」に変えることが可能です。
「あと○年で○○万円貯めるには、毎年これくらい稼げばいいんだ」
「このペースなら、子どもの進学も十分に対応できる」
「もし事業が思うようにいかなくても、対応策を考えてあるから大丈夫」
こうした具体的な見通しを持てるようになると、起業に対する焦りや不安は自然と和らぎます。
「思ったより何とかなる」「いざとなったらこうすればいい」——その安心感が、起業家家庭にとっての“ゆとり”を生むのです。
弊所では、「事業と家計をつなぐ」ためのサポートとして 「私たちのゆとり計画」 をご用意しています。
- 事業と家計の現状を整理して“見える化”
- 家族みんなで将来のライフプランを共有
- 「もしも」のときのバックアッププランづくりも一緒に
起業家やパートナーのために、「逆算型のライフプラン」を一緒に作成するためのサービスです。
もし「起業に対する不安を解消するためのライフプランを立てたい」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。
一緒に、わが家だけの未来地図を描いていきましょう。
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わたしたちのゆとり計画 ~事業と家計をつなぐ、わが家の未来地図~
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